巻機山 米子沢 山スキー

山スキー

2023年2月17日(金) L曽我(記録)、野口、古和田

昨シーズンは断念した米子沢滑走、今シーズンはなんとしても達成しておきたい。事前の情報収集を続けたが米子沢を安全に狙うならタイミング的に「ここしかない」という日が訪れる。思いっきり平日だ。しかし昨年3回も一緒にチャレンジした池上は療養中である。単独・・・という言葉が頭をよぎるが、さすがにエスケープがきかない米子沢を単独で滑るのは危うすぎると感じ、直前にあった例会で同行を募ったところ、野口・古和田が行けるという。天候も快晴が期待できる。これはもう行くしかない。会社には休みを申請し、決行することとした。
05:20、清水集落到着。平日にも関わらず、すでに車両が5台ほど駐車している。ギリギリなんとか除雪で凹んだ路側帯に滑り込む。平日なのに、みんな考えることは一緒である。

05:50、清水集落をヘッデンスタート。あたりはまだ闇の中だが、稜線の先が明るくなりはじめている。良い日になることを予感させた。やはりというか先行のトレースがばっちり残っていたので、迷うことなく06:30頃桜坂駐車場に到着。悪くないペースと感じた。しばらく野口と古和田に先行してもらうが、割引沢に入り込みそうになったため、井戸尾根方面へ誘導。ノートレースの斜面をラッセルしながら3人で登っていく。山スキーのラッセルは、自分の進行方向を自分で決められることが楽しいし、醍醐味の一つであると思う。07:10頃、井戸尾根に向かうトレースに合流して一安心する。周囲の山々が朝日に照らされ、一層美しかった。

08:00、井戸尾根上部の1,128m高点に到着。米子沢の様子を目視で確認。大きなデブリや穴は見受けられない。状態が悪ければ井戸尾根引き返しも考えていたが、滑走に問題はなさそうだ。急登を終えたところで徐々に樹林が低くなり視界が開けてくる。09:10頃、1,564m高点を通過。快晴の上、風もわずかで、昨年経験したホワイトアウトが嘘のようだ。やはり好天を狙うことこそが長生きのコツだなと改めて感じた。

いよいよニセ巻機の登りに取り掛かる。古和田はスキーアイゼンの持参がなかったため、早々にシートラーゲンに切り替える。曽我・野口はスキーアイゼンを取り付けて登行する。東側からトレースをたどりつつ、なるべく斜度が急激にならないラインを狙うが、日陰になった斜面の雪が想像以上に柔らかく、トレースが安定しない。ジグを切って西側の斜面に進むと今度はカチカチのシュカブラに変化する。ところどころ柔らかい雪もミックスとなり、スキーアイゼンの掛かりも悪く、1,700m地点で野口に無線を入れシートラーゲンに切り替える旨を伝える。斜度が大きい地点でのスキー脱着に緊張するも、アイゼンを兼用靴に付けたところでようやく一息つく。ピッケルを持ってくるべきだった・・・。古和田も柔らかい雪に相当難儀したようで、買ったばかりのワカンがいきなり役立ったと後から聞く。正直ここまでニセ巻機に苦労させられるとは思っていなかった。来てみないとわからないものだ。
ニセ巻機に至る手前で猛スピードで上がってくる山スキーヤーに追いつかれる。見覚えのあるスキー板に思わず声をかけてみると、巻機山の有名人、マキハタさん(山岳レーサー、TJAR選手)であった。巻機山をホームとする彼のTwitterを見て今回の日程を決定したのでその礼を伝えることができた。会話の中で、米子沢は三段の滝だけ一部穴が空いているが、それ以外はおおむね滑走に問題なし、と状況を教えていただく。聞けばなんとこの日2回目の巻機山ということで、絶句した。見送るとあっという間に黒い点になってしまった。

11:00、ニセ巻機山に到着。さすがに稜線に出ると風も強く、そばにあった残置イグルーを風避けに小休止しながらスキーを履き直す。同時に正面の巻機山山頂を見据えながら、滑走ルートを検討し、3人で大体のあたりを共有する。その後、避難小屋までは雪の状態があまり良くなく、転びながら下る。鞍部に出たらあとは150mの登り、空の青さが宇宙に近づいているようだ。今回のタイムリミットとしていた12:00ちょうど、山頂に到着する。爆風を想定していたが、意外や意外、微風である。滑走準備をしながらしばし3人で山頂の景色を楽しむ。遠く、富士山が見えるほど視界が良かった。
12:15、滑走準備を整えていよいよ米子沢へ。待ち焦がれた瞬間ではあるが、ここから先は完全に未知の領域だ。慎重に先を見極めて滑走開始。山頂から見えた樹林寄りのルートを選んで野口、次いで古和田が滑走開始。上部は日当たりもよくすでにザラメ状の雪となっていたが、少し標高を落とすと雪質が変化、締まり気味の乾いた新雪となった。慎重にルート確認しつつ、時折見える滑走痕も参考にしながら滑り降りる(前日の降雪は無かったはずだが時折現れては消える不思議な滑走痕だった。風で隠されているのか?)。広々としていた斜面も徐々に狭まりV字状の沢状地形となり、いよいよ米子沢に踏み入る。先行しつつできるだけ立ち止まらないことを意識しながら滑走する。沢状地形は雪崩の恐怖を常に感じるが、ルート取りは迷いようがないのが安心ではあった。先頭を3人で交代しながらぐんぐんと標高を落としていくが、比例して雪が重くなる。ターンを楽しみたいのだが、重い雪に足を取られて徐々にターンが辛くなっていく。
13:30、斜度が浅くなった1,080m地点で大休止。思えばなんだかんだとここまでまとまった休憩をとることができていなかった。米子沢の大半を滑り降りた充実感はあったが、雪が悪く苦労する部分も多く複雑な気持ちだった。この時点ですでに来年のリベンジを一人で誓っていた。それにしてもここに至るまで、夏の米子沢を思わせる地形は一切現れなかったように思う。雪はそれほどまでに地形認識を変化させるのかと感心した。13:50、休憩を終えて滑走開始。沢の末端まで出るとあとはボブスレー、14:20に無事清水集落に無事到着した。
とにもかくにも、目標だった巻機山米子沢滑走を2年越しで実現できたことに感無量である。同行の野口には巻機山ロングルートの無茶振りに応えていただき、古和田にはいきなり越後のモチパウダーの洗礼を浴びせてしまった。特に野口にはワカンに慣れない古和田のサポートを行ってもらっていたことを後で知り、一切気づかず先のことしか気にすることのできないリーダーは大反省。都合よくグループ山行は助け合いだ!と改めて感じた山行であった。
お二人とも本当にありがとうございました!池上さん、来シーズンは一緒にリベンジで!(曽我)

関連記事

最近の記録

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP
CLOSE